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「ロールキュー」は『Overwatch』の救世主となりうるか?

ゲーム『Overwatch』にて今夜未明、ライブサーバー(現行サーバー)にアップデートパッチが適用される見込みで、そのアップデートにて「ロールキュー」および「2-2-2固定」が実装される予定です。

Overwatch』についてあまり詳しくない人は「なんでそんなシステムを実装するの?」「そもそも2-2-2って何?」という疑問を浮かべることでしょう。

ということで、まずは2-2-2が何か、なぜこのシステムを実装するに至ったかを説明しましょう。

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2-2-2とは

Overwatch』におけるプレイ可能なキャラ、つまり「ヒーロー」は3種類にジャンル分けされています。

  • 体力が多く、ヘイト集めや味方の護衛、特定のエリアを支配する「タンク」
  • 体力は低いが機動性に優れ、攻撃力の高い「ダメージ(DPS)」
  • 体力は低いが回復や阻害などのバフ・デバフに優れる「サポート」

基本的にはこの3種類のヒーローを組み合わせ、合計6人のヒーローでチームを構成します。とりあえず2-2-2にしておくとバランスが良くなる、と初心者向けには言われています(現に、ゲーム内で2-2-2以外の構成をしようとすると、ゲーム側から構成についてアドバイスを受けます)。

しかし、とある強力な構成がメタ(いわゆる流行り)を席巻し、2-2-2を含むほかの構成を真正面から踏みつぶしてしまったのです。

 

「GOATS」構成の時代

「GOATS(ゴーツ)」と呼ばれるこの構成は、「ダメージ」ヒーローを1人も採用せず(応用形を除く)、タンク3人とヒーラー3人で作られる構成です。

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これが圧倒的な制圧力を誇り、『Overwatch』のプロリーグであるOverwatch League(OWL)では連日連戦、お互いがGOATS構成をぶつけ合う様子が放映され、ゲーム内のランクマッチにおいてもGOATSを見るのが当たり前、しまいにはダメージを選べば「トロール」と揶揄されるまでの流行を見せました。

この構成がなぜ強いかについて、この記事では詳細を説明しませんが、『私』さんのこちらの解説記事が非常にわかりやすいかと思います。

そんな抜群の安定性と強さを誇る「GOATS」構成でしたが、1つだけ弱点(?)がありました。それは、「GOATS」を倒すには「GOATS」を出すしかない、ということでした。その結果、上で述べたようにOWLではどのチームも「GOATS」を出し、ランクマも「GOATS」ばかりと、プレイヤーたちは「GOATS」に飽きて、嫌気を感じ始めてしまったのです。

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そこで登場したのが、今回の「ロールキュー」システムです。

 

救世主候補「2-2-2」と「ロールキュー」

「2-2-2」と「ロールキュー」は別のシステムですが、まとめて語られることの多いシステムです。

「2-2-2」はチームの構成を固定してしまうシステムで、タンク・ダメージ・サポートがそれぞれ2人必要となります。よって、ダメージ0人でタンクとサポートが3人で構成される「GOATS」にとっては実質の死亡宣告となります。

そして「ロールキュー」は、3つのロールの中から好きなものを選び、そのロール以外のヒーローを選ぶことはできません。

そもそも、『Overwatch』のランクマッチでは「5DPS」や「ロール被り」が、昔から大きな問題でありプレイヤーにとってのストレスの元となっていました。DPSしかプレイせず、サポートやタンクをプレイしたがらないプレイヤーが3人以上、同じチームに来てしまった場合、チームのバランスは大きく崩れ、それ以外のプレイヤーへの負担が増大し、勝てる可能性も低くなってしまうことが頻発していました。使えるヒーローおよびロールは早い者勝ち、「味方ガチャ」とまで呼ばれたランクマッチには、多くのプレイヤーが少なからずストレスを感じていたはずです。

つまり「ロールキュー」および「2-2-2」は、「GOATS」メタを破壊し、ランクマッチにおけるストレスの原因をも取り除く、まさに一石二鳥の画期的なシステムなのです。

 

一長一短?

そんないいことずくめに聞こえる「ロールキュー」システムですが、本当にそうなのでしょうか?

Overwatch』のトッププレイヤーであるSkylineの投稿した動画が、「ロールキュー」および「2-2-2」システムの長所および短所について説明していたので、ここでまとめてみたいと思います。

 

長所

  • プレイヤーが『Overwatch』を遊びやすくなる ―― 新規プレイヤーだけでなく、ランクマッチにおいてストレスを感じ、ランクマッチから遠ざかっていた既存プレイヤーもより気軽に、ストレスフリーなマッチを楽しめる。
  • 長期的に見て、開発陣がヒーローのバランス調整をしやすい。
  • 不安定なチーム構成になるかもしれない、というストレスがなくなる。
  • 自分が好きなロール、ヒーローを選べる可能性が非常に高くなる。

短所

  • Overwatch』のトレードマークである、ヒーローごとのユニークさや個性がなくなる危険性がある。
  • いわゆる「民度の低さ」はなくならない。「3DPS」や「5DPS」がなくなったとしても、敗北をほかのプレイヤーのせいにする人は「ロールキュー」や「2-2-2固定」が実装されても、他人に文句を言い続けるだろう。
  • いわゆるFLEXプレイヤー(相手チームの構成やマップの構造によって、プレイするロールやヒーローを臨機応変に変更するプレイヤーのこと)の強みがなくなる。ロールが最初から最後まで固定のため、圧倒的な実力を持つスナイパーがいるチームに3タンクでダイブする、といったことができなくなってしまう。

簡潔にまとめましたが、動画では詳しく説明しているので、英語に自信のある方は視聴することをオススメします。

 

「メタ」はなくならない

Skylineがもう1つだけ、動画内で語っていたことがあります。それは「GOATS」構成はなくなるかもしれないが、「メタ」がなくなることはない、ということです。どういうことでしょうか?

確かに、ロールごとに2ヒーローずつ選ばなければいけない今回のシステムによって、3タンクと3サポートによって構成される「GOATS」は使用不可能となります。「GOATS」構成が嫌いなプレイヤーにとっては、この上なく嬉しい知らせでしょう。

ですが、それ以外の構成がメタを席巻し、同じような構成を連日連戦見続けることがない、というわけではないのです。実際、「GOATS」構成の前には「ダイブ」構成が強力で人気のメタであり、数シーズンに渡ってメタとなっていました。

「2-2-2固定」がいち早く実装されているOWLではすでに、「バンカー」構成がメタとなっています。『Overwatch』がeSportsであり続け、パッチによる調整がなくならない限り、メタというものはなくならないのです。

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特にリーパーとメイをDPSに採用する構成が人気。

もしかすればこの先、「GOATS」や「バンカー」構成よりも強力で、安定した構成が生み出されるかもしれません。そうなってしまえば、ランクマッチでは数シーズンに渡って、OWLではすべてのチームがその構成を使うような状況になるでしょう。まさに「GOATS」の再来です。

「ロールキュー」および「2-2-2」にはたくさんの長所があります。『Overwatch』を「GOATS」から救ってくれるかもしれません。ですが「メタ」「主流構成」という、ゲームの根底にある概念的な要素は、これからもプレイヤーを苦しめ続けることでしょう。