ゲーム翻訳とeSportsと日々の諸々と

ゲーム翻訳者がeSportsやらゲームやら、日々の生活やらについてダラダラと書き綴るブログです。

ゲームとことば 「生きるという事は、恥にまみれるという事だ」

f:id:blackstream001:20211210081118p:plain“生きる”とはなんだろうか。人間であれば、人生で一度は考えたことがある命題ではないだろうか。

仏教には生老病死という用語がある。生まれること、老いること、病にかかること、死ぬことは人間として避けられない4つの苦しみである、という考え方だ。また仏教には”この世のすべては苦しみである”という一切皆苦と呼ばれる考えもある。これらに基づけば、生きることは苦しむことと同意である。

また「神は死んだ」という名言で有名なニーチェを代表とする哲学的な考えにニヒリズムというものが存在する。虚無主義とも呼ばれるこの考え方によれば、人間の存在や人生には意義や目的などは存在しないという。“生きる”ことの意味を真っ向から否定する考えだ。

 

“生きる”とは苦しく、意味のない行為なのであろうか。それに対する1つの答えとなりうるのが、2017年発売『NieR:Automata』内に出てきた、ポッド153による以下のセリフである。

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生きるという事は、恥にまみれるという事だ。

 

このセリフは真エンディングのスタッフロール後に流れるものなのだが、ネタバレを避けた上で、なぜこのセリフがプレイヤーの心を動かすのかという経緯を説明したい。

そもそもポッド153はその名の通り、人間ではない。知的生命体ですらない。主人公の2Bや9Sを随行支援するサポートユニットである。その思考回路はプログラミングされたものであり、自我や感情というものは存在しない…少なくともそのはずであった。

ストーリーのネタバレとなるため、ポッドが自我を得た経緯は省略させてもらうが、『NieR:Automata』のストーリーにはヨコオタロウ氏の作品によく見られる、いわゆる“鬱展開”が多く含まれている。「命もないのに、殺しあう」というキャッチコピーの通り、アンドロイドと機械生命体という機械同士が殺し合うというストーリー。しかし主人公たちアンドロイドは様々な機械生命体と戦い、触れ合い、交流する中で、次第に彼らにも意志や感情があるのではないかと考え始め、自分たちとの違いはなんだろうかと自らに問いかけるようになる。そんな中、彼らは自分たちYoRHa部隊の存在意義を根底から覆し、また否定するような衝撃的な事実にたどり着き、とあるキャラクターはそれを知って半ば自暴自棄になってしまったりするのだが、こちらもネタバレ回避を理由として詳細は伏せさせていただく。

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つまり『NieR:Automata』という作品は、“生きるとは”を問いかけるゲームなのではないだろうか。自分の存在意義に疑問を抱いたり、自らの生きている理由を否定されたりすれば、人間は簡単に絶望を抱きうるだろう。“生きる”という行為は苦しみや悲しみにあふれている。“生きる”ことを放棄したくなる時だってあるだろう。『NieR:Automata』はそれをいやというほど痛感させられるような”鬱展開”をプレイヤーに真正面から突き付けてくる。

では“生きる”とは一体なんなのか。それに対するヨコオタロウ氏なりの答えが、上に記したポッド153のセリフなのではないだろうか。少なくとも、プレイしていた当時の私はそのように感じ取った。個人的にこのセリフが印象深かった理由として、ほかでもないポッド153がこのセリフを述べたという点が挙げられる。アンドロイドは人間に酷似した見た目であるほか、個体差はあれ機械生命体も比較的人間に似た構造をしているものが多い。そんな彼らが上記のセリフを述べたところで、「よさげなことを言っているな」としか私は思わなかっただろう。ただの随行支援ユニットであるはずのポッドが、自我や感情を持たないはずであったポッドが、“生きるとはなにか”に対する答えを述べる。この矛盾とも思える演出が、私の心を打ったのだ。

 

実はかの有名な文豪である夏目漱石も「私はすべての人間を、毎日毎日恥を掻かくために生れてきたものだとさえ考える事もある」(硝子戸の中)という、似たような言葉を残している。生きるという事は、恥にまみれるという事だ。であるのなら、恥を晒すことを気にしたり恐れたりすることをせず、日々を前向きに生きていけばいいではないか。このセリフはそんな励ましなのではないかと、私には思えてならない。確かに生きることは苦しいし辛い。しかし恥をかくことを恐れ、なにか新しいことや難しいことに挑戦する姿勢を忘れてしまえば、“生きる”という行為の良い半面を享受することはできないのではないだろうか。確かに生きることに意味はないのかもしれない。だがそれを受け止めた上でどう生きていくのか、それこそが大事なのではないだろうか。

 

ちなみにではあるが、英日ゲーム翻訳者らしい補足をすると、上記のセリフは英語版だと

Being alive is pretty much a constant stream of embarrassment.

と訳されている。

「恥ずかしい」を表す英語表現には(be) ashamedと(be) embarrassedの2種類があるが、前者は非常識なことや非道徳的な行為を行った際に感じる「罪の意識」のような恥に重点が置かれているのに対し、後者は失態や間違いを犯した際に他人に対して感じる「気まずさ」のような恥を表現している。そのため、このセリフの英訳としてshameよりもembarrassmentの方がピッタリなのだ。またstreamは「流れ」という意味の単語だが、転じて「なにかが連続したもの」を表すことがある。なので、この英語版のセリフを日本語に再翻訳すると「生きるという事は、恥をかく事の連続だ」などとなるだろうか。

 

ここまで長々と書き連ねてきたが、『DoD』シリーズや『NieR』シリーズを象徴するあのセリフでこの記事を締めくくりたいと思う。

 

本当に、本当にありがとうございました。

TGS行ってきます

明日からTGSということで、自分も有償ボランティアとして4日間参加します。

インディーブースのどこかにいるはずなので、よろしくお願いします。

電車で毎日通うと疲労がたまってしまうので今日から上京して、秋葉原のカプセルホテルに泊まる予定です。

めちゃくちゃ短いですが、以上報告でしたー。

三日坊主はいけない

ブログ開設して記事を3つ投稿し、その後2週間何も書かなかった結果がこのタイトルです。

ええ、その通りです。3日坊主になってしまいました。

というのも最初の3件がそこそこの力を入れて書いたもので、ひとつ書き終えるまでに2時間程度かけていました。そのため記事のクオリティのハードルがあがってしまい、(今回のような)雑記的な記事すら投稿できなくなっていました。

それと同時にTGSの準備や仕事の案件、物件の内見や引っ越しの準備などの諸々が重なってしまい、忙しくなってしまったのも理由ではあります。

 

ただこれだけは言えます。

三日坊主は良くない。

クオリティが低くてもいいから、コツコツと続けることが大事ですよね。

これからは定期的にブログに投稿するようにします。

 

あ、そういえば『完全爆弾解除マニュアル(Keep Talking and Nobody Explodes)
』を買ってフレンドと遊んでみたんですが、ワチャワチャして面白かったです。

興味のある方はぜひ。

勇者が『スマブラSP』の海外大会で禁止に ― 乱数とEsports

スマブラSP』のキャラクター「勇者」がオーストラリアの大会にて使用禁止となりました。経緯や詳細については、Automatonさんが書かれたこちらの記事が詳しいのでぜひ読んでください。

勇者の使用を禁止する決断に至った理由として、オーガナイザーのSASCは次のように説明しています。

RNG permeates every element of Hero's design, from spell selection to random critical hits and hocus pocus effects. While randomness has to varying degrees always been present in competitive games and other Smash games, Hero is so dependent on randomness that it cannot be 'played around' or accounted for in competitive play. The argument is similar to the reason why items are banned in competitive play. [...] We want to emphasise that this ban is not because hero is too strong, but because he is anti-competitive. We believe that tournaments are meant to provide an opportunity for players to demonstrate their skill and that, as a general rule, the player who plays more skilfully should emerge victorious. Hero's design has a very strong potential to de-emphasise player skill which isn’t fair for those who work hard to improve their abilities for competition.

(以下訳)

呪文の選択やランダムに発生する「かいしんのいちげき」、そしてパルプンテの効果と、勇者のデザインはことごとく乱数(RNG)に満ちたものとなっています。乱数は今までも、ほかのゲームやスマブラにおいて多かれ少なかれ存在してきましたが、勇者はランダム性に依存するキャラクターです。そのランダム性はプレイヤーが対処できるものではなく、ゲームの競技性を損なうものです。この点は、大会においてアイテムが禁止されている理由と同等のものだと言えます。(中略)私たちは今回、勇者が強すぎるから使用禁止にしたのではありません。競技シーンにふさわしくないから、という理由で決断を下したことを強調したいのです。トーナメントはプレイヤーがスキルや実力を発揮し証明するための場であり、優れたプレイングを行った選手が勝利を掴むべきです。しかし勇者を使用することにより、マッチの勝敗にプレイヤー個人のスキルがあまり関係なくなってしまう恐れがあります。大会のためにたゆまぬ努力をしてきたプレイヤーに対し、不公平だと私たちは考えます。

つまり、スマッシュ攻撃が一定の確率で強力になる「かいしんのいちげき」、そして下必殺ワザのコマンドがランダムで選ばれることは、プレイヤースキルに依存しないものでありながら、勝敗に大きく影響してしまうのは大会として、そしてEsportsとしてどうなんだ、という議論なわけです。

現実のスポーツでたとえ話をすると、サッカーにおいてゴールが一定確率で2点になる、もしくは野球においてバッターがランダムに選ばれる、というルールに変更されたとしましょう。これらは勝敗に直結はせずとも大いに影響をおよぼすもので、そもそもの実力差があったとしても、ランダム性によってそのパフォーマンスが上下してしまいますよね? こういったランダム性を原因として敗北した場合、プレイヤーや監督、ファンはルールの変更を求めるでしょう。

ただ、長期的な目で見ればより優れたプレイヤーが多く勝利するだろうし、運要素を含む攻撃に当たらないよう立ち回ればいい、といった反論が存在するのも事実です。これは人によって意見が分かれるトピックであり、Esportsにおける大きな議題の1つといっても過言ではないでしょう。

この乱数とEsportsの関係性について、詳しく説明してくださっている動画があります。それがこちらです。

www.youtube.com

スマブラに対して「運」はどのように影響を及ぼすのか?

投降者であるMy Smash Cornerさんは、対戦ゲームにおける「運」、つまり乱数(RNG)を以下の3つにジャンル分けしています。

  1. Reactable RNG - 反応可能な乱数
  2. Unreactable RNG - 反応不可能な乱数
  3. Unfair RNG - 不公平な乱数

どういったものか、この記事でも説明しましょう。

 

1. Reactable RNG - 反応可能な乱数

結果自体はランダムだが、そのランダムで選ばれたイベントにはプレイヤーが反応するだけの時間があり、対処可能なのがこの乱数です。

例えば、スマブラにおけるピーチの下必殺ワザは、以下のアイテムからランダムに1つを掘り出します。

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得られるアイテム自体はランダムですが、何が出たかは一目瞭然で、対戦相手は反応が可能ですよね。運良く(悪く)ボム兵が出たとしても、当たらないよう立ち回ることが可能な訳で、逆にピーチ側はボム兵を当てて撃墜できるような戦略を取ることが必要になってくるわけです。

今回使用禁止となった勇者の例で言えば、下必殺ワザの呪文コマンドがこれに当たると言えるでしょう。表示されるコマンド4つ自体はランダムに選ばれるわけですが、双方のプレイヤーともそれに反応が可能で、それに応じた対策や立ち回りが理論上可能となります。

 

2. Unreactable RNG - 反応不可能な乱数

逆に、その速度や性質からプレイヤーの反応が不可能である乱数も存在します。

例えば、ルイージの横必殺ワザである「ルイージロケット」は、一定の確率で暴発を起こします。『スマブラSP』ではその確率が1/10となっていますが、『DX』では1/8となっており、それによって撃墜されるシーンもしばしば見かけました。

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ほかにも、Mr.ゲーム&ウォッチの横必殺ワザ「ジャッジ」も、一定確率で「9」が表示され、命中できればほぼ確実に敵を撃墜することが可能となっています。

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勇者の「かいしんのいちげき」もこの、反応不可能な乱数にカテゴライズできるでしょう。ランダム性にこそ依存していますが、運が良ければ早期撃墜が可能であり、そもそもスマッシュ攻撃ですので、相手の蓄積ダメージが高ければ通常のスマッシュ攻撃でも撃墜できる、(フレームデータや後隙などを除けば)まさにデメリットのない優秀な攻撃というわけです。

 

3. Unfair RNG - 不公平な乱数

そして最後のジャンルが「不公平な乱数」です。「不公平」とは、一体どういうことでしょうか。

今までの2つの乱数は、あくまでプレイヤー対プレイヤーの図式は崩しておらず、リスクが存在するものでした。しかしこの不公平な乱数は、図式を「ゲーム対プレイヤー」に変化させるものであり、まさに運がいいプレイヤーに恩恵を与えるものとなっています。

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スマブラX』では、ステップや走行反転、横スマッシュ攻撃や横必殺ワザを地上で行った際、低確率でキャラクターが「転倒」します。これは完全にランダムに発生するもので、コンボの途中で攻撃側が「転倒」することもあれば、後隙の多い攻撃を行った敵に反撃しようとした時に「転倒」することもあります。立ち回りをミスしていないのに、運悪く転倒したために撃墜されることもあるでしょう。

スマブラX』の続編、『スマブラfor』では「転倒」がなくなりましたが、別のランダム要素が追加されました。それが「落下演出」のランダム性です。

画面上からKOした場合、キャラクターはそのまま撃墜されるか、奥に飛んでいき撃墜するいわゆる「星」、画面手前に衝突する「手前やられ」の3パターンで撃墜が演出されます。これは完全にランダムであり、キャラクターの蓄積ダメージやふっとびの距離などは関係がありません。ではこれがどのように不公平かというと、この3つの演出は実際に撃墜として処理されるまでにかかる時間が異なるのです。

そのため同時に画面上からKOした場合、通常の撃墜が一番早く処理されるため、先にバーストラインに到達していたとしても、「手前やられ」や「星」で撃墜されたプレイヤーが勝利することとなります。

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勇者はこのような「不公平」なランダム性はありませんが、強いて言うなら呪文の1つ「パルプンテ」でしょうか。この呪文はランダムに効果を発動する呪文であり、運が良ければ巨大化や無敵化になることもあります。逆に運が悪いと、メガンテを使用して自滅ということもありえます。もしこのコマンドが選ばれていたとしてもプレイヤーが使用しなければいい話なので、必ずしも不公平というわけではありませんが、ランダム性に依存しすぎているという観点では不公平かもしれませんね。

 

3つの乱数について説明してきましたが、スマブラに限らず対戦ゲームでは運要素に依存したキャラクターやシステムは、少なからず存在します。もちろんそれで大会や勝負が盛り上がることもあれば、理不尽な目に合うこともあるでしょう。しかし勝敗がすべてでありれっきとした競技であるEsportsにおいて、そういった運要素を嫌う者が一定数存在することも事実であり、こういったキャラクターを使用禁止にするか、はたまたプレイヤースキルで捻じ伏せるべきだという結論に至るか、議論はまだまだ続いていくでしょう。

ゲーマーは英語を勉強しておけ

「英語なんて将来使わないから」「テストでいい点が取れればそれでいい」「別にGoogle翻訳があるし勉強する必要ないでしょ?」と、中学・高校などで英語を勉強してこなかった人、もしくはそのような考えを持つ学生はそこそこの数がいるのではないでしょうか。

ですが声を大にして言いたい。

「ゲーマーは英語を勉強しておけ」

 

自分は英語が好きで、中学3年生の時はサンフランシスコに1週間の留学、高校の時に英語を勉強して試験を受け、アメリカの大学に入学しました。今現在も、その英語力を生かしてゲーム翻訳者として収入を得ています。

ですが身に付けた英語力は、ゲーマーとしてゲームを楽しむ時にも大いに役立っています。その理由を説明したいと思います。

 

①得られる情報量が倍増する

一番大きなメリットはこれに尽きます。昨今、日本でも話題となり人気が出てきたeSportsですが、そもそも情報の量やコミュニティ内での議論、情報伝達の早さは外国に勝てません。

もちろん、日本でも情報をすぐに出すメディアや代わりに翻訳をしてくれる親切な方々もいます。ですがすべての情報を翻訳できるわけではありませんし、翻訳してくれる方が興味のないキャラやゲームの情報は翻訳されないことが多いでしょう。

一方で、英語の文法をある程度理解しており、根気と辞書さえあれば自分の知りたい情報を「英語」で調べることができます。日本語で共有されている情報と合わせれば、それだけで情報量は2倍以上になりますよね? それにもちろん、英語話者は日本語のそれと比べものになりません。3倍、4倍に膨れ上がってもおかしくないのです。

また、リスニング能力があると得られる情報量はさらに増えます。E3などのゲームイベントにおいて、デベロッパーやパブリッシャーが話す内容を理解できれば、今後発売予定のゲームの情報をいち早く得られますし、上手なプレイヤーが配信中にぽろっとこぼす小ネタや攻略情報、テクニックや立ち回り、その場その場での思考の内容などを理解することができます。もし英語を書くことができるなら、直接質問したりすることもできるでしょう。

eSports関連のゲームをするのであれば、英語を理解できるというのは非常に大きなアドバンテージです。eSportsでは情報量=実力と言っても過言ではありません。格闘ゲームならコンボや相性、FPSなどであればマップ情報や武器の強さや使い方などなど、情報を知っているかで勝敗に大きく関わってきます。「情報を制する者は戦いを制す」、です。

 

②外国人とコミュニケーションが取れる

オンラインゲームをしていれば、外国人プレイヤーと一度は出くわしたことがあるでしょう。こういった時、「英語でコミュニケーションが取れれば……」と思ったことはありませんか?

チャットでもVCでも、お互いに理解し合えればもっと楽しくゲームを遊べることでしょう。もちろん、言語の壁がある状態でお互いに理解できるよう努力する、という行為そのものに楽しみがあることは否定できません。日本のサブカルチャーが好きで、日本語を独学してある程度コミュニケーションが取れる外国人が増えているのも、また否定できません。

ただ、英語ができればスムーズにコミュニケーションが取れ、一緒に楽しく遊べることができるのも事実です。母国語が英語ではない人で、日本語は話せないけど英語なら話せるし理解できる、という外国人ゲーマーも多いはずです。そんな時、サラッと英語でコミュニケーションが取れれば、友達や周囲のゲーマーから尊敬の目で見られること間違いないでしょう。

 

③翻訳されていないゲームでも楽しめる

ゲーム翻訳者がこれについて語るのはどうか、と言われてしまいそうではありますが、世の中には翻訳されていないゲームがごまんとあります。特にインディーゲームにはその傾向が強く、日本語化MODすら存在しないゲームも多々あることでしょう。

「プレイしたいけど日本語版がない」「興味あるけどテキストが英語だからちょっと……」と、プレイしたいゲームを遊べないのはもったいなくありませんか? フレンドにオススメされたけど、英語しかないためプレイできなかった、ということもよくある話でしょう。

英語ができれば、テキストのすべてを理解することはできなくとも、ストーリーの大まかな内容や操作方法くらいはわかるはずです。辞書を片手にプレイすれば、わからない単語を随時調べることもできます。そして何より、自分が好きなゲームを言語に縛られず、プレイすることができるのです! 公式日本語化を待ったり、翻訳MODのリリースを待ったり、日本語対応しているか調べる必要もありません。興味のあるゲームを、気兼ねなく遊べるのです。

 

3点ほど、ゲーマーとして英語を勉強することのメリットを力説してきました。英語を勉強しなくてもゲームを楽しめるのは事実です。ですが、英語ができればそのゲームの世界が、今までの何倍にも広がるのです。英語の勉強法などはネットで調べればいくらでも出てきます。必要なのは根気とやる気と、ちょっとの工夫です。もし機会があれば、このブログでも紹介していく……かもしれませんね?

 

「ロールキュー」は『Overwatch』の救世主となりうるか?

ゲーム『Overwatch』にて今日13日未明、ライブサーバー(現行サーバー)にアップデートパッチが適用される見込みで、そのアップデートにて「ロールキュー」および「2-2-2固定」が実装される予定です。

Overwatch』についてあまり詳しくない人は「なんでそんなシステムを実装するの?」「そもそも2-2-2って何?」という疑問を浮かべることでしょう。

ということで、まずは2-2-2が何か、なぜこのシステムを実装するに至ったかを説明しましょう。

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2-2-2とは

Overwatch』におけるプレイ可能なキャラ、つまり「ヒーロー」は3種類にジャンル分けされています。

  • 体力が多く、ヘイト集めや味方の護衛、特定のエリアを支配する「タンク」
  • 体力は低いが機動性に優れ、攻撃力の高い「ダメージ(DPS)」
  • 体力は低いが回復や阻害などのバフ・デバフに優れる「サポート」

基本的にはこの3種類のヒーローを組み合わせ、合計6人のヒーローでチームを構成します。とりあえず2-2-2にしておくとバランスが良くなる、と初心者向けには言われています(現に、ゲーム内で2-2-2以外の構成をしようとすると、ゲーム側から構成についてアドバイスを受けます)。

しかし、とある強力な構成がメタ(いわゆる流行り)を席巻し、2-2-2を含むほかの構成を真正面から踏みつぶしてしまったのです。

 

「GOATS」構成の時代

「GOATS(ゴーツ)」と呼ばれるこの構成は、「ダメージ」ヒーローを1人も採用せず(応用形を除く)、タンク3人とヒーラー3人で作られる構成です。

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これが圧倒的な制圧力を誇り、『Overwatch』のプロリーグであるOverwatch League(OWL)では連日連戦、お互いがGOATS構成をぶつけ合う様子が放映され、ゲーム内のランクマッチにおいてもGOATSを見るのが当たり前、しまいにはダメージを選べば「トロール」と揶揄されるまでの流行を見せました。

この構成がなぜ強いかについて、この記事では詳細を説明しませんが、『私』さんのこちらの解説記事が非常にわかりやすいかと思います。

そんな抜群の安定性と強さを誇る「GOATS」構成でしたが、1つだけ弱点(?)がありました。それは、「GOATS」を倒すには「GOATS」を出すしかない、ということでした。その結果、上で述べたようにOWLではどのチームも「GOATS」を出し、ランクマも「GOATS」ばかりと、プレイヤーたちは「GOATS」に飽きて、嫌気を感じ始めてしまったのです。

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そこで登場したのが、今回の「ロールキュー」システムです。

 

救世主候補「2-2-2」と「ロールキュー」

「2-2-2」と「ロールキュー」は別のシステムですが、まとめて語られることの多いシステムです。

「2-2-2」はチームの構成を固定してしまうシステムで、タンク・ダメージ・サポートがそれぞれ2人必要となります。よって、ダメージ0人でタンクとサポートが3人で構成される「GOATS」にとっては実質の死亡宣告となります。

そして「ロールキュー」は、3つのロールの中から好きなものを選び、そのロール以外のヒーローを選ぶことはできないというシステムです。

そもそも、『Overwatch』のランクマッチでは「5DPS」や「ロール被り」が、昔から大きな問題でありプレイヤーにとってのストレスの元となっていました。DPSしかプレイせず、サポートやタンクをプレイしたがらないプレイヤーが3人以上、同じチームに来てしまった場合、チームのバランスは大きく崩れ、それ以外のプレイヤーへの負担が増大し、勝てる可能性も低くなってしまうことが頻発していました。使えるヒーローおよびロールは早い者勝ち、「味方ガチャ」とまで呼ばれたランクマッチには、多くのプレイヤーが少なからずストレスを感じていたはずです。

つまり「ロールキュー」および「2-2-2」は、「GOATS」メタを破壊し、ランクマッチにおけるストレスの原因をも取り除く、まさに一石二鳥の画期的なシステムなのです。

 

一長一短?

そんないいことずくめに聞こえる「ロールキュー」システムですが、本当にそうなのでしょうか?

Overwatch』のトッププレイヤーであるSkylineの投稿した動画が、「ロールキュー」および「2-2-2」システムの長所および短所について説明していたので、ここでまとめてみたいと思います。

 

長所

  • プレイヤーが『Overwatch』を遊びやすくなる ―― 新規プレイヤーだけでなく、ランクマッチにおいてストレスを感じ、ランクマッチから遠ざかっていた既存プレイヤーもより気軽に、ストレスフリーなマッチを楽しめる。
  • 長期的に見て、開発陣がヒーローのバランス調整をしやすい。
  • 不安定なチーム構成になるかもしれない、というストレスがなくなる。
  • 自分が好きなロール、ヒーローを選べる可能性が非常に高くなる。

短所

  • Overwatch』のトレードマークである、ヒーローごとのユニークさや個性がなくなる危険性がある。
  • いわゆる「民度の低さ」はなくならない。「3DPS」や「5DPS」がなくなったとしても、敗北をほかのプレイヤーのせいにする人は「ロールキュー」や「2-2-2固定」が実装されても、他人に文句を言い続けるだろう。
  • いわゆるFLEXプレイヤー(相手チームの構成やマップの構造によって、プレイするロールやヒーローを臨機応変に変更するプレイヤーのこと)の強みがなくなる。ロールが最初から最後まで固定のため、圧倒的な実力を持つスナイパーがいるチームに3タンクでダイブする、といったことができなくなってしまう。

簡潔にまとめましたが、動画では詳しく説明しているので、英語に自信のある方は視聴することをオススメします。

 

「メタ」はなくならない

Skylineがもう1つだけ、動画内で語っていたことがあります。それは「GOATS」構成はなくなるかもしれないが、「メタ」がなくなることはない、ということです。どういうことでしょうか?

確かに、ロールごとに2ヒーローずつ選ばなければいけない今回のシステムによって、3タンクと3サポートによって構成される「GOATS」は使用不可能となります。「GOATS」構成が嫌いなプレイヤーにとっては、この上なく嬉しい知らせでしょう。

ですが、それ以外の構成がメタを席巻し、同じような構成を連日連戦見続けることがない、というわけではないのです。実際、「GOATS」構成の前には「ダイブ」構成が強力で人気のメタであり、数シーズンに渡ってメタとなっていました。

「2-2-2固定」がいち早く実装されているOWLではすでに、「バンカー」構成がメタとなっています。『Overwatch』がeSportsであり続け、パッチによる調整がなくならない限り、メタというものはなくならないのです。

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特にリーパーとメイをDPSに採用する構成が人気。

もしかすればこの先、「GOATS」や「バンカー」構成よりも強力で、安定した構成が生み出されるかもしれません。そうなってしまえば、ランクマッチでは数シーズンに渡って、OWLではすべてのチームがその構成を使うような状況になるでしょう。まさに「GOATS」の再来です。

「ロールキュー」および「2-2-2」にはたくさんの長所があります。『Overwatch』を「GOATS」から救ってくれるかもしれません。ですが「メタ」「主流構成」という、ゲームの根底にある概念的な要素は、これからもプレイヤーを苦しめ続けることでしょう。

ブログ開設しました

 

ということで、ブログを開設しました。

ゲーム翻訳、ゲーム、eSports、その他雑記などなどについて、何か書けそうだなと思った時に記事を書いて投稿しようと思います。

 

ではまず自己紹介を。

ゲーム翻訳を生業にしています、黒澤勇太と申します。

今までの実績に関してはこちらのLinkedinを読んでもらえればと思います。

なぜこの職で食べて行こうと思ったかについての経緯などは、後々記事を書ければなー、なんて考えています。

 

ゲームをプレイするのが大好きで、特にeSports関連のゲームなんかを好んで遊んでいます。

実力自体は低いですが、日々DiscordのVCで、フレンドとわいわいしながら楽しんでいます。

今は主に、以下のゲームをプレイしています。

ほかにもスマブラだったり、ぷよぷよだったりと、様々なジャンルのゲームを広く浅くプレイしています。

これらのゲームについては様々な情報だったり遊んでいる状況だったりを記事として書いていくかもしれませんね。 

ほかにも、翻訳のことや雑談なんかを投稿していこうと思っていますが、あくまで「気が向いたら」というスタンスなので、投稿ペースについてはあしからず。

 

というわけで、これからよろしくお願いします。